場をつくるのか、場からつくるのか:Page⑥質疑応答稲継:せっかくなので会場の皆さんから質問はありますか? ジャイアント食堂のことじゃなくても構いません。
観客:次は何をやるんですか? 稲継:次は何をやるか……。私、すごい引っ掛かってることがあって。今回のジャイアント食堂にはティーンを呼べてないんですよ。小さい子も、おじいちゃんおばあちゃんも、暑い時期にしては来てくれたと思うんですが。私、とにかく思春期の子が大好きなんですが……。やっぱキューンっていうか。 ティーンってすごく大事な時期じゃないですか。私もこういうアートをやりたいって思ったのはティーンだし。ティーンの子たちが、「なんかかっこいいから行こうぜ」っていうイベントにどうやったらできるんだろうと。それは居間 theaterが作品をつくる上で、一番考えられてなかった層なんですが、やっぱりそういう未来あるティーンと関わりたいと。もしジャイアント食堂をもう一回できるんだったら、ジャイアント食堂実行委員会みたいなのをティーンから募るのはどうだろう。今度は高校とかに全校配布して、文化祭実行委員会みたいなノリで、一年位かけて一緒に。ダンスやりたいとか、かっこいいラッパー知ってますとか……。何なら彼らのやりたいことを上演台本にしていったりしたらすごいいいなって思ってます。 宮崎:普段はいないんですか、自習する子たちとかって。僕もそうだったけど、地方だといるじゃないですか。 山内:はっちにいますね。 宮崎:はっち、すごい。 稲継:中心街の文化施設ですね。 宮崎:美術館にもテーブル出てたらめちゃくちゃ快適だと思うんだけど。 稲継:多分、まだ気づかれてないだけではと思うんだけどね。 宮崎:気づかれてない感じか。 また銀行の話になりますけど、しののめ信金のライブラリーに自習室があって、そこは中学生とか高校生に来てほしいなと思ってつくったんですよね。中高生の時期に、地元にそういう場所があって大人が楽しんでいるのを横目で見るという体験があるかないかで、一度地元を出たあとに戻ってくるかどうかの境目になるでしょう、みたいな話をしてて。地元も捨てたもんじゃないねっていう経験を。 稲継:事業をやろうってね、自分の町で。 宮崎:そう。そういう「捨てたもんじゃないな」っていう経験をどうしてもらうかってあると思う。ダンスの練習とかないんですか? あの長い部屋のガラスのところで。 山内:市庁前でよくやってますね。 宮崎:あぁ、確かに、近いですよね。美術館も夜、内側を暗くして外を明るくしておけば、水平連窓がいい鏡になりそうな。 稲継:ちなみにスケートボーダーもいましたよね? 山内:よくご存知で。はい、いらっしゃるんですよね。スケートボードなどは、やっぱり設備が傷つく可能性もあるので、どうしたらいいかなぁって。(良い方法を)考えたいなあと思うんですけれども。 稲継:他に質問ありますか? はい、どうぞ。
観客2:私は一度、八戸市美術館に行ったことがあるのですが、展示室の監視員の人がすごく話をしてくれた記憶があります。あれは意識的にやってらっしゃるのですか? 山内:そうですね。多分お話をされたのは、展覧会の案内員かと思います。八戸市美術館では、案内員さんと呼んでいます。美術館がオープンして最初の展覧会では特に、コミュニケーションを大切にしていたり、来館された方と作品をとっかかりに話をしたりしています。来館者に、これはどういう作品だよ、どういう展示だよということをお伝えして。 展覧会によっては、静かに自分の中で作品と対話をする時間を大切にしてほしいものもあるので、声かけもタイミングを見てね、とか。その展覧会ごとに(対応の方針が)あったりします。 案内員さんは、ジャイアント食堂でも絵の脇についてずっと見てくださっていました。ジャイアント食堂開催日の直前まで美術館のコレクション展をやっていて、同じ作家の別の絵をジャイアント食堂でも展示していたので、来場者に話を振ってくれたり。コレクション展を見ていた方がジャイアント食堂にも来て、ここにも大きな馬の絵があるね、とお話が広がって。すごくコミュニケーションを生んでくれるスタッフさんたちなんですよ。 山崎:毎朝ミーティングしてるのは、受付の方とか案内員さんですよね。 山内:そうです。受付と警備員と案内員とで毎日ミーティングします。清掃さんは絶賛清掃中の時間なので、資料でお伝えしたりしているんですけども。施設の中にはそれぞれ別の業者さんが委託で入ってるので、コミュニケーションを我々も取りつつ、こういうことを大切にしてほしいということをお伝えしながら一緒に運営していますね。 稲継:ジャイアント食堂の時も本当に贅沢に時間とってくださいました。「はい、今日こういうマニュアルで」と一方的に渡して済ますというのが一番嫌だったので、そもそも居間 theaterって何なのかというプレゼンを2時間ぐらいさせてもらいました。ジャイアント食堂がどういう趣旨なのか、話を聞く時間も勤務としてやってくれて。 あとは大谷能生さんにサウンドアート講座もしてもらいました。「フルクサスっていうのがあって」とか、ジョン・ケージの楽譜を実際に見せて「これが有名な『4分33秒』で」とか、サウンドアートの話をしつつ、大谷さんを知ってもらう時間をつくってもらって。 あとは、ジャイアント食堂では上演中に、オリジナルの時報が2〜3時間おきに1回鳴るんですが、その時報の声を案内員さんと受付のスタッフさんにやってもらいました。八戸の中で好きな場所と、美術館の中で好きな場所を3つ考えてもらって、一人ひとりに録音させてもらい、あとはみんなで声を合わせて「ジャイアント食堂が○時をお知らせします」という台詞も録音して、それらを大谷さんがミックスしてつくってくれました。 そういう時間も今回取ってくださって、贅沢でした。日常的にそこで働いている人たちに、大掛かりなイベントをやるという負担だけをかけて辛い思いをさせたくないというのがあったので、イベント前に時間を共有できてよかったです。 山崎:当日は普段よりもお客さんから話しかけられることが多かったと思うんですけど、すごく話が盛り上がっていましたよね。案内員さんには、展示している絵を守るという業務で当日いてもらっていたんですが、カラオケをやってる時とかには、絵の横に立ちながら拍手と手拍子をしながら見守ってくれたりして。「私の仕事はここまでです」という線引きをあまりしないというか、楽しんで、もう一歩進んで参加してくれるというか。そういうマインドをすごく感じました。 稲継:音、出ますかね?
稲継:これ美術館にぜひ寄贈したいですよね。音の作品としてね。大谷さんグッジョブですよね。美しいよね。
はい、ということで急に終わりますが。「場をつくるのか、場からつくるのか」、面白い話ができて大満足です。ありがとうございました。 |